■市場規模は6・3兆円
韓国は人口5000万人あまりの小さな市場でありながら、高速ネット回線が普及していたり、小売業のEC化が進んでいることで、アジアの中でも有望なEC市場です。
韓国統計庁(統計局と類似)の資料によりますと、韓国EC市場の16年度におけるBtoC取引額は、前年度比20%増の64兆9134億ウォン(約6兆3000億円)でした。
韓国統計庁がEC関連調査を開始した01年実績の3兆3470億ウォン(約3200億円)に比べ20倍近く増加しています。今後も継続的に成長が見込まれています。
日本のBtoC EC市場が1桁成長を続けている点を考えますと、海外展開を検討する日本企業は、成長性の高い韓国EC市場にも注目する必要があります。
■多彩なショップが競争
次は、韓国EC市場における多彩なネットショップについて説明します。
韓国の代表的ネットショップとして、流通大手が運営する「総合モール」があります。主なプレーヤーとしては、流通大手ロッテの「LOTTE.com」やSHINSEGAEグループの「SSG.com」などがあります。
日本の楽天市場と同様の形態で、店舗出店により運営される「オープンマーケット」も多くのユーザーを獲得しています。代表的なオープンマーケットとして「Gmarket」や「11STREET」などがあります。
「Gmarket」は09年、米国の「eBay」に買収されましたが、韓国内での高い認知度を考慮して、ブランド名を維持する形で運営されています。IT大手のSKplanetが運営する「11STREET」は、競合に比べスタートが遅れましたが、成長を遂げています。
■専門店シェアは1/4
アジアの他国とは異なる韓国EC市場の特徴として、通販運営者がアパレルやコスメなど一つの商品やカテゴリーに絞って商品を選定、販売する「専門通販」が多数あります。
16年の専門通販による取引額は、13兆4000億ウォン(約1兆300億円)ですので、韓国EC市場(BtoC)の4分の1を占めるほどの大きな市場を形成しています。
専門通販の中では、「アパレル」や「コスメ」などを取り扱う店舗が目立ちます。女性アパレルの「ENVYLOOK」のように、日本や中華圏市場に向けて、越境ECに取り組む事例も生まれています。
このような専門通販の越境EC展開を支援しているのが、「cafe24」です。cafe24は海外展開を検討する企業を対象に、ネットショップ構築や統合運営代行、マーケティング、物流など越境ECビジネスに必要なあらゆるサービスを提供しています。
cafe24を通じて構築された専門通販の16年度の取引規模は、5兆2000億ウォン(約5000億円)もあります。韓国専門通販の取引額の40%を占めており、韓国EC市場の活性化をリードしています。
今回のコラムでは、韓国EC市場の規模や特徴について説明しました。特定のカテゴリーに特化した専門通販市場が大きく形成されている点が、モール中心のEC取引が活発な日本や他のアジア市場と比べた韓国市場の大きな特徴だといえます。
次回からは成長している特徴的なECサイトを紹介します。
〈執筆者 略歴〉
cafe24 マーケティング戦略研究所
イ・シファン所長
最近のEC市場において大きな話題となっている、「越境EC」に関するさまざまな経験やノウハウを蓄積している。記事の寄稿やセミナー講義、関連著書出版なども多数。日本や中華圏、英語圏市場進出を検討する企業に向けてマーケティング戦略、ビッグデータツール活用、ブランド戦略、CRM設計など専門的なコンサルティングを行っている。
《新連載》【韓国EC市場の今】第1回 成長率は毎年2桁増、越境参入にも有望
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