【キリン堂 伊藤雄喜氏 新規事業開発部・通販ネットビジネス部長】〈中国越境ECのトップランナー〉/「独身の日」に4・5億円売るまで

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伊藤雄喜 新規事業開発部・通販ネットビジネス部長

伊藤雄喜 新規事業開発部・通販ネットビジネス部長

ドラッグストアチェーンのキリン堂は15年11月11日に開催された、中国の「独身の日セール」で約4億5000万円を売り上げた。アリババグループの越境ECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」内の日本企業ではトップの実績だったという。通販事業の陣頭指揮を執る新規事業開発部・通販ネットビジネス部長の伊藤雄喜氏は、「これからは『チームジャパン』で中国市場に挑戦したい」と意気込む。中国越境ECのトップランナーに中国市場の難しさや可能性、今後の展望について聞いた。

日本企業で1位に

 ─今年の独身の日の成果は。
 今年は約4億5000万円の売り上げになりました。「天猫国際」内の日本企業では1位、全体では4位だったと聞いています。咋年は約1億8700万円の売り上げでしたから2倍以上に伸ばすことができました。昨年の実績をもとに、今年はメーカーさまとの協力体制を強化できたことが大きかったです。
 特にジャパンゲートウェイさまとはヘアケアブランド「レヴール」の販売において強いパートナーシップを組むことができました。「レヴール」のシャンプー・トリートメントだけで15万本以上の販売となりました。これは咋年の2倍以上の実績です。他にも大手NBメーカーさまにも協力していただけるようになりました。
 ─越境ECに取り組む以前の国内のEC事業の状況は。
 私が4年前に新規事業開発部に着任し、国内のECサイトの運営を任されることになりました。当初は私自身ITの知識がなく不安の多い中での船出でした。年商1億円もない事業でしたが、当社の会長からは「年商100億円を目指してこい」と言われましたので、「ECにはなにか可能性があるのかもしれない」と半信半疑ながら、「やるしかない」と思いました。
 当初は販売チャネルとして、楽天市場店と自社サイトの運営を行っていました。まずは商品数を増やす戦略を立て、半年で1000品目から8000品目を目指しました。そんな時に、東日本大震災が起きたのです。私たちは阪神大震災の経験から、現地の生活に必要な生理用品や水などを準備しました。東日本のインフラが寸断される中、大阪にある当社のサイトには多くの注文が舞い込みました。これを機に当社の通販サイトを多くの方に知ってもらうことができました。その後、楽天のスーパーセールに積極的に参加したり、ヤフーやアマゾンにも販売チャネルを拡大したりしたところ、EC売り上げは右肩上がりに伸びました。
 ─越境ECに取り組んだきっかけは。
 国内のEC事業が軌道に乗った時に、縁あってアリババの担当者が当社を訪れました。いらっしゃったのは13年10月でしたが、14年3月にオープンする「天猫国際」の出店のお誘いをいただきました。実際に中国に足を運び、中国経済のスケールの大きさや、アリババの勢いを肌で感じ、挑戦しないことが一番のリスクだと思いました。
 私は乗り気になりました。社内調整は大変でしたが、最後は社長に直談判して、1時間以上プレゼンし、「1年間だけ私に預からせていただきたい。もしダメだったらクビにしてください」と覚悟を伝え、ようやく許可を受けました。
 ─「天猫国際」に出店してすぐに売れましたか。
 オープン準備の商品登録から私が携わりましたが、日本のモールよりもルールや審査が厳しく大変でした。日本で売れていたり、中国で人気の化粧品や日用品を約150品目登録しました。グランドオープンの3日前の3月16日にプレオープンすると、初日は8件の注文がありました。翌日には21件の注文があり喜んでいると異変がありました。3日目はなんと280件も注文が舞い込んだのです。
 後から調べてみると、当社の店舗がオープンすることが、中国の大手SNS「微博(ウェイボー)」で拡散され、口コミが広がり、お客さまが一気に訪れたようでした。最初から中国市場の勢いを感じることができました。
 2カ月目からは売り上げが落ち着き始めました。日本では広告を出したりして集客しますが、中国ではとにかく顧客還元しないと売れません。送料無料の価格ラインを検討したり、割引クーポンを出したり、手探りでさまざまな施策を講じました。商品数を増やしながら中国ではどのような商品が売れるのかもリサーチしました。そして、初めての独身の日セールを迎えました。

(続きは日本ネット経済新聞 12月24日・31日の合併号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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