【キタムラEC事業部長 逸見光次郎 執行役員】オムニチャネル施策でEC売上拡大図る

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オムニチャネル施策でEC売上拡大図る
 キタムラはECサイト上や店頭タブレットから注文があった売上高をEC関与売上高として公表している。15年3月期のEC関与売上高は、前期比1.1%減の430億3400万円だった。同社はネットと店舗を融合させるオムニチャネル施策を進めることによりEC関与売上高をさらに拡大させたい考えだ。EC事業部長としてオムニチャネル施策の陣頭指揮を執る逸見光次郎氏に現状と今後の展望を聞いた。

-15年3月期のEC関与売上高がわずかに減収となった要因は。
 15年3月期のEC関与売上高の内訳を見てみると、ネット経由で注文を受けた売上高が前期比9・7%減の262億円、店頭でスタッフがお客さまにタブレットで商品をご案内して注文を受けた売上高が同15・2%増の167億円でした。今回、ネット経由の売上高の中でも、楽天市場店やヤフーショッピング店、アマゾン店といったECモール店の売上高が減りました。ECモール店の売上高は、14年3月期に100億円ありましたが、15年3月期は74億円でした。ECモール内は価格競争が激しく、売り上げを伸ばそうと思うと利益を削らなければいけません。EC事業部では単純にEC売上高を伸ばすことを目指してはいません。当社はECサイトを通して注文した商品をなるべく店頭で受け取ってもらいたいと考えています。全国に873拠点(15年3月末時点)ある店舗というインフラを最大限活用することにより、当社の強みを発揮できるからです。

-店頭受け取りを増やすことでどんなメリットがあるのですか。
 当社には全国の店舗にカメラに詳しいスタッフがいます。店頭でお客さまが購入したカメラを受け渡す際には、要望があればですが、カメラのレンズにフィルターを付けてあげたり、液晶レンズにはフィルムを貼ってあげたり、日時の設定をしてあげたりしています。ご質問があれば機器の使い方や、用途に合わせた写真の撮り方までレクチャーすることができます。お客さまの目的はカメラを買うことではありません。写真を撮影し、それを残すのが目的です。当社としてもカメラを売ることだけが目的だとは思っていません。カメラの販売をきっかけに、写真プリントなどを通してお客さまと長いお付き合いをしたいと考えています。店舗でスマートフォン(スマホ)の販売や、iPhoneの修理サービスに力を入れているのも同様の狙いがあるからです。写真を撮影する端末を販売・修理しながら、プリントのご利用を促しているのです。

-ネット上で集客するための工夫はありますか。
 集客を図るため、全店でブログを書くようにしています。ブログに公開した記事件数は157万件を超えており、閲覧者数はのべ6700万人に上っています。ブログを書く際には、タイトルにエリア名やメーカー名、商品名などのキーワードを必ず入れるようにしています。
 来店した顧客には店舗スタッフがネット会員への登録を促します。15年3月末時点のネット会員数は前期末比69万人増の680万人にまで拡大しています。店頭で会員登録を勧めているため、会員の約8割が「お気に入り店舗」を登録してくれています。「お気に入り店舗」を登録してくれたお客さまは、ECサイトを利用した際に店舗受け取りを選んでくれるケースが多いので、またお店に来ていただけます。
 ネット会員になったお客さまに、メルマガをお送りすることで再利用を促すこともできます。将来的には、店舗からお客さん一人ひとりにメールを送れるようにしたいと思います。例えば、カメラを買った方に、「そのカメラに合うレンズが入荷しましたのでぜひご来店ください」と店長名で送ったら、そのお客さんに来店していただけると思います。ターゲットとなる顧客の抽出などはEC事業部で支援できるようにしたいと思います。
 スマホサイトの商品ページには、「電話で相談」というボタンを付けました。コールセンターを設け、専門オペレーターが対応しています。電話問い合わせからは、月間1500万~2000万円の注文が入ります。注文の半数近くが時計です。これはネットだけで展開している商品であるため、お客さまは商品の品質などについて相談してから購入したいと考えていることが分かりました。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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