大手小売企業、構想明らかに/EC売上比率の急拡大図る/ファーストリテイリング30%超、ヨドバシカメラ50%目指す。

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大手小売企業が相次いで、売上高に占めるECの比率を急拡大させる構想を明らかにした。ファーストリテイリングは数年以内に、EC事業の売上高比率を30%以上に高める方針を発表した。ヨドバシカメラは将来的にEC売上高を店舗売上高と同等の規模にまで拡大させたいという。セブン&アイ・ホールディングス(HD)も比率にこそ言及していないが、19年2月期にEC売上高を現在の5倍超に当たる1兆円にまで伸ばす計画を発表している。大手小売各社がEC売上高についての強気の目標値を相次いで公開する背景には、オムニチャネル(オムニ)に取り組む決意を社内外にアピールする狙いがあるようだ。

3~5年で達成
 ファーストリテイリングは10月8日、海外展開を含めた売上高に占めるECの比率を30~50%にまで高める構想を明らかにした。
 15年8月期の国内におけるEC売上高は前期比27・9%増の324億900万円、全社売上高に占める比率は4・1%だった。
 柳井正会長兼社長はEC比率30~50%の達成時期について「3~5年ぐらいで実現できると思う」(柳井)との見通しを示した。
 ファーストリテイリングは今年6月、コンサルティング大手のアクセンチュアと提携し、ビッグデータを活用したオムニ戦略を強化する方針を発表した。
 同社は今秋にもスマホアプリを投入し、リアルとネットの顧客が、「いつ・どこで・何を買ったのか」という情報の収集を始める。利用者には、収集したデータを基に、リアルとネットで体験できる、最新のITサービスを提供していきたいという。
 顧客の購買情報を基に一人一人の好みに応じた商品を開発したり、店頭やネットの販売動向から需要予測を行うことも計画している。
 大和ハウス工業と提携し、ECの配送を強化するための物流センターも新設する。来春、東京・有明に開設する物流センターは、EC物流の拠点となり、関東圏への即日配送を可能にするという。

リアル店舗と同等に

 ヨドバシカメラは16年3月期のネット通販売上高を1000億円の大台に乗せる計画だ。将来的にはリアル店舗と同等の7000億円規模にまでネット通販売上高を拡大させたいという。
 ヨドバシカメラはオムニ戦略の推進を通して、実店舗とネット通販の垣根を無くすことにより、顧客にネットとリアルの相互利用を促進しようとしている。
 ネットとリアルのサービス共通化に向けて、会員向けのポイントサービスや、保証サービスなどを統一するのはもちろん、ネット通販にとって最大のネックであった、商品が届くまでの〝時間〟という壁もなくそうとしている。
 現在までに、北海道、東北南部、関東、中部、関西、九州北部については、注文当日に商品を配送できる体制を整えた。当日配送エリアの人口カバー率は75%を超えたという。全国の主要都市に大型店舗を展開している強みを生かし、店舗から通販顧客に商品を届けることにより、迅速な配送を実現しているのだ。
 ユーザーにヨドバシカメラのECサイトの利便性を浸透させることができれば、EC売り上げのさらなる引き上げも可能だと考えている。

(続きは日本ネット経済新聞 10月22日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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